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3/23(火)開催COC+R事業キックオフイベント


パネルディスカッション
テーマ「キャンパスを出る学生、キャンパスに来る社会人-地域と大学の繋がり―」


パネリスト 大前 貴裕氏 (株)ミユキデザイン取締役
柳ヶ瀬をたのしいまちにする(株)取締役
青木 はるひ氏
小川 晋平氏 Design&Communication 代表
ファシリテーター 杉山 歩 山梨県立大学COC+R 教育プログラム長
国際政策学部 准教授

左から杉山歩、青木はるひ氏、小川晋平氏、大前貴裕氏

杉山 歩(以下杉山) ぼくたちがプログラムでやりたいこと、VUCA時代を自由に生き抜くスキルと自活力とは、ある意味一緒な気もするんですね。これからどういった教育プログラムを作っていったらいいのか、一つは学生向け、一つは社会人向けに学びを提供する。特に社会変革を求める層に対しても教育プログラムをつくっていきたいと思ってはいるんですが、小川さん、教育で社会変革に貢献できることはあるんでしょうか。
小川 晋平(以下、小川) プログラムというのは社会での実践でもあるけど、実践の前でもあると考えたら、失敗できる場として使えたら有意義じゃないかと思います。たとえば、本当にその事業、プロジェクトで失敗したら損失が出る、下手をしたら会社がなくなってしまう事態と考えると、失敗ができるというプログラムなら意味があるのかな、と。

杉山 すごく良いお話、ありがとうございます。COC+のサブコーディネーターをしていた時に教育プログラムの視察でデンマークに行き、1回社会経験を積んだ人たちに実践的な学びを提供するスクールを視察しました。そこでは絶対に失敗するプログラムを学ばせる。なぜ失敗したか、を学ぶ。失敗から学ぶことはたくさんあると思う。学生に失敗させるのも一つの学びのポイントかなと思いました。実際、柳ヶ瀬でもなにか失敗はあったのですか。
大前 何をもって失敗というか、難しいところもあるんですが、定期マーケットをやる前に単発のイベントをたくさんやっていて、イベントってすごい達成感があって盛り上がるのですが、持続する仕組みが伴わない。2回目は無理やりやっても3回目は断られる。そういうのがいくつかある。持続するやり方をつくろうというところにたどり着いた。
杉山 持続性ってすごい問題になるじゃないですか。持続性にとって何が一番のポイントなのでしょうか。
大前 お金はやはり大事なポイントだったのですが、お金が回るからといっていい形で継続するわけではなくて、お金とマインドのバランスじゃないですかね。お金があっても続かないとか、マインドがあってもお金がないと続かない。お金とマインドの両立、バランスですかね。
杉山 小川さんに広島の例を詳しく聞きたいのですが。続かなかったのはどういった点でしょう。

小川 続かなかった理由は明確で、自分事(じぶんごと)になる重要性ですね。広島の家具のメーカーさんが助成金を使い切るまでの期間はがんばる、ということで、自分事としてちゃんとやってなかった。助成金がなくても、産業を振興したい、身銭を切ってでもやっぱり、この街で生まれ育って働く、この街の子どもたちのことを本当に思っていたら、もっともっとちゃんとやったんでは、と思います。
杉山 柳ヶ瀬の活動では関わりを持ってやっている学生さんはいるんですか。
大前 学生の関わり方を模索していて、もうちょっと長期的に学生が関わる入口をつくって運営だけでない街の何かへの、関わり方を考えています。学校が中心市街地から離れてしまっていて、ぼくらも一緒に活動している岐阜大の先生が街の中に新しい場所をつくろうということをしています。
杉山 どうやって学生を街に出すのか。体験学習など外へ出すプログラムをたくさんつくっていますが、学生のモチベーションをどうつくっていますか。
大前 専門領域でいろいろあるのでは。私が非常勤講師をしている建築系の学生なんかは、割とはっきりしていて、形になるものとか、アイデアを出したり、とか自分の学びの領域に直結するものは、割と積極的だったり、地域系というか手作り系の学生は、お店に直接コンタクトをとりにいったりとか、より街の中に近いところにいくほど乗ってくるとか。その子の目指しているものによって幅があって、なかなか一様にこうだよとは言いにくいところがありますね。
杉山 青木さん、学生との繋がりは。
青木 杉山先生が学生を飲みにつれていってくれて、ざっくばらんに話す機会をつくってくれるのをよく見かけています。飲みの場とか食事をする場でざっくばらんたわいもない話ができて、こんな生き方をしている社会人がいるんだ、とか学生の時に知ったら、その学生にとっていいじゃないですか。
杉山 学生教育と社会の関わり方っていうのを、どういう教育プログラムを、これから社会に出る学生たちに対して大学はやるべきなのか。ぼくたちたちは、COC+で企業と学生が今年度も25個くらいのプロジェクトをやっていて、来年度も4月から新しく25個くらいやろうとしています。今回は、学生と社会人を一緒に学ばせようと思います。今はどちらかというと、学生が社会に学びに出ていますが、今度は社会人と学生を一緒に学びをさせたいな、と思っています。こんな学びをしたらいいってものがありますか。

大前 社会に出てどんな仕事もそうなんでしょうが、必要になってくるスキルというのは変わってくると思うのです。たとえば君は来月から海外に行ってくれと言われたら、まず語学が必要で、その街のことを勉強したりすることが必要で、学びというのは自分が表現する中で何が必要となってくるということでは。
小川 洋菓子のブランディングの仕事が多いのですが、商品開発から関わらせてもらっていて、パティシエさんとの会話が非常に多い。お菓子の知識がいるんですよ。そう意味で洋菓子学校に行きたいとは思いませんが、洋菓子の勉強はしたいです。
大前 あらゆることに手を出し始めていて、例えばお店のデザインとかを考えていくと、つくる人とコミュニケーションとったり、コンテンツのコアに迫ったりするとかするんじゃないですか。そうなったら自分でやったらいいんじゃないか、と。その道の専門、プロフェッショナルの領域だから手を出したらいけない、みたいな先入観もあったりするんですが、いやそうじゃない、とにかくやってみたらいいんじゃないか、と思ったりしたりします。
小川 杉山さんに返したいのですが、今、大前さんがおっしゃったように自分でやる、というけど、実際には資金も場所も、お金も時間も経験もいるわけですし、学生や若い社会人の方に、じゃやってみようか、と思う方もたくさんいるんですか。
杉山 ぼくらの頃に比べたら増えているのは間違いない。今は先が読めないVUCA時代で、大企業に入ってもどうなるかわからないってこともあるので、割と学生たちに新しいことにチャレンジしやすいマインドセットは多い気がする。でもやっぱり、安定志向もいますし、いろいろいていいと思う。本来、学びの場というのは、失敗しないように、そのために訓練したり、知識をつけたりする機関です。最初に言っていた失敗してもいいような状況をつくれるか、というのは教育のしがいがあると思いますね。最近、僕はいろんなところでティール組織ということ話をしている。従来の軍隊型ではなく、成功している組織体はみんなティールであって、学生たちも求めているのはティールとか家族的なものであって、軍隊的なところに入りたくない、という学生が増えている。学校の失敗しないところだけじゃない教育にもつながっていくと思う。この本、「ティール組織-マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現-次の組織モデルはこれだ」。一番下がレッドで「オオカミの群れ 力による支配」、アンバー「軍隊 長期的展望 厳格な階級に基づくヒエラルキー」、オレンジ「機械 イノベーション、科学的マネジメント、社長と従業員のヒエラルキー」、この下の3つが、大前さんが言っていた学校というところは失敗できないもの、というのはこういう組織でうまくいく人材ということでしょう。でもVUCA時代の今は、こういう組織がうまくいっていない時代になっていて、に成功しているのは上の2つのグリーンとティールで、グリーンは「家族 多様性の尊重、ヒエラルキーは残すものの従業員の呼称をメンバー、キャストへ」、ティールは「生命体 信頼で結び付いている、指示命令系統はなくて良い」。今、たぶん成功しているのはティールに基づいた組織と言われています。

「Tolerance」の“T” 寛容性
実は「Talent」というのは、メーカーズムーブメントによって地方に面白い人が流れてきています。次は「Tolerance」、寛容さですが、共存にとって一番重要ということで多様性、LGBTに限らず多様性がある土地は大切です。最後の「Technology」ですが、大学に限らず、地方のテクノロジーは企業や各分野の専門家がたくさん持っているので大学が地方にとって特に重要とも思わないのですが、この3つのTを山梨や柳ヶ瀬、京都でどう実現するか。「Talent」については地方にいっぱい流れてきている。たまたま今日来ていただいた3人が2010年代に都心から地方に流れた。今、地方がフィールドとしてすごく面白い時代になっている。どうやって大学が社会と、面白い社会人と、きょうの3人みたいな人とつながっていけばいいのか。
大前 いろんな属性の人が混ざり合うところがどんどん減ってきている。だからこそ、何かの変化とかが大事になってきている。人がフラットに出会える場が街の中にできればいいな、と思う。
杉山 いろんな人たちと会わせるというのは今回のプログラムのひとつのテーマです。もう一つは大学にいろんな社会人が講師じゃなくても来られることが大切なのかな。小川さんからみて学生たちがどうやって社会人と会うのがいいのでしょうか。
小川 パッケージにすると知りたいことが、きれいに整ってしまうのでは。リアルを知るということが若い人や学生に重要ではないか。それにはゼミではなくて食事に行った時のほうが素が出る、とか。互いに本音で話せたり事実を語ったりすることができます。
杉山 これまで話してきたことで失敗する経験が大切、つくりこまないことも大切だということに共感しました。最後に、青木さんに、どのようなプログラムにしてどんなことを伝えたいと思いますか。

青木 特に山梨は中小企業が非常に多いこともあって、企業が何をしているのか、学生たちはまったくわからないで悩んでいます。企業側も人材が足りないと悩んでいます。実際に企業に行って体験できるプログラムがあったらいいな、と思います。
杉山 伝えるだけでなく、なにか学生と本音で語りあう場が必要と思います。そういうことをしないと社会変革につながるような場にはつながらないと思います。これをご縁に、きょうの皆さんには、これからもプログラムへのアドバイスをいただけたら、と思います。きょうはありがとうございました。
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