日時：2025年３月１５日（土）13：30～16：30
場所：山梨県立大学飯田キャンパスB館120教室

【開催趣旨】
世界で出会う様々な相手に対して、私たちはある一定の理解の仕方を持っています。ハイデガーという哲学者によれば、その仕方を規定するものが技術であり、現代では作られた物をはじめ人材としての人も同じく、あらゆるものが効率よく役立つものになりえているのかが重要になります。たとえば宇宙への移住のように人類の存亡をかけたプロジェクトでは、その実現に不可欠なものは技術であり、膨大なエネルギーやAI、人自身も資源として使えるように開発し、用立てる仕組みが求められます。今日、私たちが出会う人や物への理解もまさにそうした仕方に限定されてきているのでしょうか。人同士の関わりが重視される福祉や看護、教育などのケアの現場では、相手をよく理解することが求められる一方で、そのことは相手を管理下に置いて制御の対象とすることと同一視されていないでしょうか。また働く人も同様の対象として管理されるように仕向けられていないでしょうか。そうした私たちのあり方を規定する技術を顧みて、その本質が多様な他者の現れ方を示すことにあるのであれば、他者の別様の現れ方を探ることは真理への道として重要な課題になるでしょう。技術の本質に照らして、人同士や人と物とのつながりの古層にある、より豊かな関係性を探ることが、この会開催の根っこにある狙いです。より具体的に物とのつながりについて言えば、たとえばゴッホは靴を何度も描いていましたが、その靴を見る私たちはどのようにそれと出会うことができ、その道具としての真実性はどこにあるのでしょうか。あるいは山梨の石垣を見るとき、物の声を聴く、つまり人工物から伝わる職人の思想や暮らし方との対話の次元を開く技術の役割というものもあるのでしょうか。私たちの共同性のあり方を探るうえでは、元来コミュニケーションとはどのようなものであり、今後どのようなものになりうるのかを問うことは欠かせません。今回の作業場では、上記の観点を踏まえつつ、他者との出会いの多様性と可能性について各自が思うこと、感じることを話し合います。そのためにゲスト講師の方々にも自由にお話しいただき、日々の活動やこの場でのお考えをご紹介いただきながら対話を進め、これから始める関係学への誘いとしたいと思います。

お問い合わせ
山梨県立大学地域人材養成センター　055-225-5412
担当教員：山﨑スコウ竜二（特任准教授）